遅咲き桜

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zoom RSS 緋寒桜の咲くころに

<<   作成日時 : 2011/02/17 20:53   >>

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     ・ ・ ・ 初 夏 の 馨
 懸案を残しつつも日常の喧騒が追い立てるように次々と押し寄せていた。
 その中でもやはりダンの多忙さは驚異的だったが、かえってエディへの不安感を一掃してくれて、彼にとってはありがたいことだったのかもしれない。
 タカシは、たまにランスと待ち合わせして食事に行く程度で、ダンとの連絡も滅多に取れずにいた。ましてエディからの連絡やその存在すら判らずじまいだった。
 あれほど盛況だった舞台‘T・T’もエディの降板以来、興行成績も右肩下がりに落ち、結局公演の三分の一も消化せずに、批評家から激しく貶(けな)され、いつの間にかフェードアウトしてしまっていた。
 いくら周りを名優で揃えてもエディのスター性と存在感に勝ることが出来なかったのだろう。
 日の暮れが遅くなる頃には、全てが平常になりつつあった。
 デザイン科専攻のキャロルは一年で卒業とあって、先月からデザインオフィスに就職していた。進路が決まった事で更に逞しさが増したように感じらる。ルームメイトのシンシアと一時ゴタゴタがあったが、無事乗り越え元の鞘に収まったようだ。
 アメリカでもゲイピープルが肩を寄せ合って生きていけるのも、ここニューヨーク等の大都会だからなのかもしれない。
 しかし、いつも何かに怯えている様子がキャロルから伺えた。なんの不自由も無いお嬢様の彼女が全てを捨てて自立している姿は立派だが反面、酷く疲れるだろうと思えた。
 結局シンシアとの寄りを戻すしか彼女達にとっては良い方法が無かったのではないだろうか・・・。
 そんな中でタカシだけは、一人焦りを感じていた。
 もう直ぐあの夏がやって来る、ニューヨークに来てもう一年になろうとしていた。
 スタジオでのバイトにも慣れ、アシスタントの一人としてスタッフとも上手く仕事をこなす、ありふれた毎日の中に身を置いても、何故か違和感を払拭することは出来なかった。

 ある日、スタジオのセッティングをしているとスタッフの一人が大声を張り上げた。
 「誰の携帯だ、ここでバイブってるぞ」
 全員の目が音のする方に集中した。
 「仕事中は電源も切れって言っておいたよな」 ブライアンもファインダーを覗いたまま怒鳴っていた。
 とうのタカシはまさか自分の物だとは気づかず辺りを見回した。
 「誰のだ・・光ってるぞ」 
 もしもと思いつつズボンのポケットに手を伸ばすとあるはずのモノが無い。一瞬蒼ざめたタカシは慌てて携帯を確認すると、体中から嫌な汗が湧き出るのを感じた。
 「すみません、俺のでした」 一言謝り深々と頭を下げるとブライアンも呆れたように振り向き苦笑していた。
 「タカシって以外と天然だよな」 スタッフの一人がそう呟いているのが耳に入ってきた。
 「犯人が判ったところで、こっちに集中してくれ・・そうだタカシ・・」 ブライアンが一声かけた。
 「はい」 タカシはピクリと姿勢を正した。
 「悪いが‘TESS’の先月号持ってきてくれるか」 
 罪悪感で固まっていたタカシにブライアンが声を掛けた。
 「うふっ、まったくタカシには甘いんだから」
 「えっ・・」
 「TESSの先月号ならここにあるの知ってて、あんたに着信のチェックの為に時間稼ぎさせてくれちゃって・・」
 「そうなんですか?」
 「本当・・タカシって鈍いわね・・」 第一アシスタントのアルがタカシの胸を軽く突いた。
 「・・判りました・・」
 タカシはアルの顔を一見してスタジオの外に出て行った。
 つづく・・・

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