遅咲き桜

アクセスカウンタ

zoom RSS 緋寒桜の咲くころに

<<   作成日時 : 2011/02/22 15:37   >>

ブログ気持玉 0 / トラックバック 0 / コメント 0

 「よし、これであとはダン次第だな。返事くれますかね?」
 「さあね、彼も変わっちゃったし・・」
 「一年で、色々な事が変わってしまうんですね」
 「そうね・・タカシもここに来て一年になるのね」
 「夏が来ればですけど・・・」
 「なんだか、ずいぶん昔のことみたい・・」
 二人はしみじみと当時を振り返り感傷に浸った。
 四人と出会った頃はしょっちゅうエディのアパート、現タカシのアパートに皆が集まりワイワイ騒ぐことが多かったが、それぞれが仕事を口実に?その機会もめっきり減っていた。
 こうしてランスと食事をして会えるのも月に一度か二度会えれば良いほうである。
 必要以上の慣れ合い的な関係は仕事にも生活面でも支障がでるかもしれないが、それでもタカシは疎外感を感じるし、もしタカシが帰国してしまった後に残されたランスや他の三人の関係はどうなってしまうのだろう・・?ふとっ、グラスを傾けるランスをタカシは見入ってしまった。
 「なによ・・ガン見して・・やだ、歯に何か挟まってる・・?」
 「違いますよ、ランスは変わらないでいてくれて、ありがたいなって・・・」
 「・・・タカシぃ〜・・泣かせること言ってくれるわね・・。この際だから、今夜私のことめちゃめちゃにしてくれない・・」
 「そっ、そんな・・意味では・・」
 「冗談に決まってるでしょ・・全くノンケの男はユーモアのセンスが無いんだから・・」
 暫くするとタカシの携帯が鳴りだした。
 「ダンからの返信です・・」
 「何だって・・」
 「えっ〜と、‘悪いタカシ、今忙しくて他の事に構ってる暇が無いから勘弁してくれ’って・・」
 「何っ〜それ・・、超〜ムカ付く・・。まったく何様のつもりよ、これじゃ、もう私達もにメールしてくるなって言ってるみたいなものよね・・」 ランスの怒りも爆発寸前まで達していた。
 「・・そうですよね」 ただタカシには、今日のランスのように、メールでは書けない事情があり、真意はもっと複雑で意味深い何かがダンにはあるように思えた。
 
 案の定、ダンからのメールに腹を立てたランスの荒れ方は酷かった。その店の閉店まで、ダンへの愚痴や恨みつらみを永遠と聞かされる羽目になった。
 しかしそれだけ、親友として仲間として、辛酸を共に舐め頑張ってきたからこその表れだとタカシにも良く判っていた。
 ランスにしてみれば、エディの名声もダンの成功も、共に祝ってやりたいと心底思っているのに、いつも蚊帳の外的な扱を受けることにどうしても納得ができないのかもしれない。
 結局酔いつぶれたランスを彼のアパートまで送り届け、自室に戻ったのは午前三時を回っていた。
 ここに来た当初は、タカシも酒を飲むと酔い潰れることが多かったが、それは介抱してくれる誰かが・・エディがいつも傍にいてくれるから安心して泥酔することが出来たに違いない。がっ、今は飲むことはあっても決して我を忘れるほどの醜態をされすことはなくなっていた。
 しかし、ランスの情報だけでは、尻切れトンボのようにあまりに中途半端で益々エディの事が気掛かりになっていた。
 部屋に着いたタカシは携帯をチェックすると、ブライアンからメールが一件、ダンからは留守電に一件メッセージが残されでいた。
 急いでメッセージを再生すると、携帯を耳に当てた。
 “さっきはごめん、きっと近くにランスが居ると思ったんで、留守電に入れておく。エディの事は随分以前からシスコで知り合った人から聞いて知っていたんだ。エディの奴・・携帯替えたらしく、連絡もとれないし居場所すらまったく判らずじまいだ。正直・・心配でおかしくなりそうだ・・。だからがむしゃらに仕事して、演技でも俺を抱きしめてキスをして愛してるって言ってくれる誰かがいると・・気が紛れてる・・・。最低の男だろ・・”
 「ダン・・・」 タカシはメッセージを聞きながらアパートを飛び出していた。
 
 夢中で少し白じくなり始めた通りを駆け抜けると、息を切らしてダンのアパートの前に立ち尽くしていた。
 後先考えずに来てしまったが、我に返ると呼び鈴を押す手を躊躇させた。
 時間的にも迷惑だろうし、何の力にもなれないかもしれないが、今はただダンの傍にいてやりたかった。
 勇気を振り絞り、短く二度ブザーを押した。
 応答があるのを待ってる間の十数秒が、タカシには酷く長く感じられた。
 息が上がって呼吸数が増えているのに、更に鼓動が激しく脈打っていた。
 ‘ガチャリ、ガチャリ’とロックが外され、眠そうにやつれたダンが顔を覗かせた。
 最後に会ったのが、彼がシスコから帰って来た日なので、あれからもう一か月が過ぎていた。
 「タカシ・・どうしたんだこんな時間に?」 縺れた髪を手で掻き揚げながらタカシを部屋の中に招き入れた。
 「・・・・」 ドアを閉めたダンにタカシは何も言わずに振り向きざまにダンを抱きしめた。
 「・・・無理するな・・」 たぶん初めてダンを年下として労わったタカシの一言だった。
 ここに来て、年上のタカシがダンやランスに助けられ、兄貴らしいことを何もしてやれていないことに、いつも歯がゆさを感じていた。
 だが今日初めて、その思いを払拭出来たように思えた。
 小柄なタカシに力強く抱きしめられたダンは、一瞬躊躇ったがその体躯の全てをタカシに委ね預けた。
 「疲れた・・・」 ダンはタカシに一言呟き、二人は近くのソファーに崩れるように倒れ込んだ。
 ダンは頭をゆっくりタカシの膝を枕にして横になった。
 そんなダンの髪を撫でながら「おやすみ・・」と、膝を抱え縮こまって眠るダンに近くにあったブランケットを掛けてやった。
 ダンは間もなく安心しきったように‘スっースっー’と寝息を立てて眠りに落ちていった。その精悍な寝顔のダンの目から一筋の涙が光っていた。
 ニューヨークは、頑張れば頑張っただけ見返りのある街である。でも、それだけに犠牲にするものも多いし身を削る思いをしなければならない。
 虚勢を張って自身を偽り、戦い続ける戦士達にも束の間でも休息は必要である。
 死んだように眠るダンの姿をタカシは忘れることがないだろうと思えた。
 つづく・・・

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文
緋寒桜の咲くころに 遅咲き桜/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる